Essay

ネ ッ ト の 安 全 性
1967年度卒業 工・通信 佐藤一
はじめに

 今回,私が投稿させていただく内容は平成20年1月~3月に朝日新聞社からの依頼で50歳以上の女性を対象として
「アスパラネクストエージ」(全国版)に掲載した「あんしんネット術」の内容を基にリニューアルしたものです。
 朝日新聞では3回にわたり掲載されましたが,1回の字数が1,000字と限定されましたので,詳細な説明が出来なかっ
た部分があります。そこで今回はその内容に多少説明を加えて修正加筆しました。皆さんにはわかりきったことばかり
かと思いますがもし,苦手にしている方がいたら少しはお役にたつかも知れません。

1.インターネット利用者は9千万人超

 わが国の平成20年「通信利用動向調査」(総務省報道資料)の結果によるとインターネット利用者数(過去1年間に
インターネットを利用したことのある人)は9千万人を超え,前年に比べると280万人増加している。このペースで増加
すると今年末には1億人を突破するであろうと予測されている。また,個人がインターネットを利用する際に使用する
端末では「パソコンから利用」(90.8%),「モバイル端末からの利用」(82.6%),「ゲーム機・TVからの利用」(6.2%)とな
っており,特にゲーム機・TVからの利用が利用者数から見ると前年より209万人増えており,急速に拡大している。
このことは,最近のゲーム機は無線LANのアクセスポイントを利用してネットワークに接続し,アップデートデータをダ
ウンロードしたり,インターネットを使って専用のサイトからゲームを購入することが一般的になったり,テレビジョンも
通信回線を利用してTV番組に視聴者が参加することが可能となり,マルチメディアの概念の一つであるインタラクティ
ブ性が日常的に利用されていて,TVからさまざまなWebサイトへアクセスをして情報が得られるようになったことが原
因の一つと考えられる。
表-1 インターネット利用者数と人口普及率
利用者数(万人) 人口普及率(%)
16年末 7,948 66.0
17年末 8,529 70.8
18年末 8,754 72.6
19年末 8,811 73.0
20年末 9,091 75.3

ここで,過去5年間のインターネット利用者数と人口普及率をみると
表1のようになっている。
さらに,インターネットの世代別個人利用を前年と比較してみると
13歳~40歳までは9割を超えているが50歳代で82.2%,60歳~
64歳で63.4%65歳~69歳で37.8%,70歳代で27.7%,80歳
以上は14.5%と年齢が増えるに従って利用率も低くなっていて,
特に
65歳以上から急激に低くなっている。
この傾向は前年もまったく同様の結果を示している。(図1)

 一方,携帯電話とパソコンの利用率を見ると携帯電話が
75.4%,パソコンが64.1%となっている。また,携帯電話の利用
率を世代別にみると20歳代~40歳代で
9割を超えていて,60
台後半でも
5割強の利用があるが,パソコンの個人利用では13歳~40歳代で8割を超えるが,60歳代後半では
27.3%となっており,「携帯電話よりも価格が高く,操作にも相応の知識が必要なパソコンは携帯電話以上に世代
間で格差が大きい」と分析している。

 インターネットの利用目的の上位
5つを見るとパソコンからの利用では「企業・政府等のホームページ・ブログの
閲覧」が
56.8%と高く,電子メールの受発信(49.1%),個人のホームページ・ブログの閲覧(47.4%),商品・サービ
スの購入取引(45.5%),地図情報提供サービス(36.8%),メール
マガジンの受信(22.1%)と続く。一方,携帯電話からは「電子メー
ルの受発信」が54.5%と高く,商品・サービスの購入・取引(30.1%
),デジタルコンテンツの入手・聴取(21.8%),個人のホームペー
ジ・ブログの閲覧(16.3%),メールマガジンの受信(15.3%)の順と
なっている。
 このようなインターネット利用者の利用目的の現状や利用状況
の増加を見るといまやネットの利用拡大を考えるよりも接続の質
やセキュリティ,利用内容に視点を移す時期に来たと考えられる。
また,各世帯のインターネット接続回線の種類を見るとブロードバ
ンド回線は
7割(73.4%)を超え,そのうち光回線の利用率は39.0%
となっていて,光回線によるブロードバンド化が進展している。
 同調査によると,セキュリティ対策の実施状況では「何らかの対
策を導入」している世帯は80.2%となっていてそのうちの
5
(53.4%)を超える世帯が「ウイルス対策ソフトを導入」を挙げてい
る。その他に対策として「知らない人からのメールや添付ファイル
,HTMLファイルは不用意に開かない」(37.6%),「プロバイダのウ
イルス対策サービス」(26.1%),「ファイアウオールの使用」(26.1%),「OS,ブラウザのアップデート」(23.7%)の順に
なっている。
 この調査結果で「プロバイダのウイルス対策サービス」や「OS,ブラウザのアップデート」実施の割合が低いのに驚か
される。この点はパソコンを販売する各メーカーが単にセキュリティーソフトをプリインストールして提供するだけでなく,初心者にもわかりやすくその必要性を説明し,簡単な設定ガイドなどを充実させて必要性を強く訴える必要がある。
また,プロバイダのウイルス対策サービスについても同様で,利用者は自分の契約しているプロバイダーがそのよう
なサービスを提供していることを知らなかったり,そのための料金も知らずにいることが多い。
この原因の一つはプロバイダのHPが初心者には分かりにくくなっていることが挙げられる。

 近年,18歳未満の子供達がインターネットやメールによる犯罪の被害に合って社会的に大きな問題となっている。
パソコンの場合でも携帯電話の場合でも「子どもにとって有害」と考えられるサイトを見れないように設定するフィルタ
リングソフトを導入することができるようになっているが,このフィルタリングサービスの認知度はパソコン利用者では
85.4%,携帯電話利用者では77.2%と高くなっているが,実際の利用状況をみるとパソコン利用者は20.3%,携帯
電話利用者では
49.8%となっており,認知度が高い割に利用率が低い結果となっている。
 このことは今の親の世代がインターネットやフィルタリングに関する正しい知識が不足しており,あまり重要とは考え
ていないことが多く,言葉として知っているが実際にどうしたらよいのかなど具体的な行動に結びつかないことが原因
と考えられる。
 政府は国民のセキュリティ意識向上を狙い,毎年2月2日を「情報セキュリティの日」と定め,昨年(19年)から本格的
習熟活動を開始した。
それに伴って経済産業省では国民のセキュリティ意識向上を目的に「Check!PC」と言うサイトを立ち上げて「セキュ
リティのチェックファイル」,「セキュリティ対策」,「パソコン環境別リスク診断」,「セキュリティ基礎知識」など多くの項目
を設けて注意を促しているが,このようなサイトが開設されていることを知らない人が多いことが残念である。
「Check!PC」のURLは

   http://www.checkpc.go.jp/top.html

2.ウイルス感染防ぐには
 
 コンピュータウイルスは約9割が電子メールから感染すると言われている。毎日使うメールを快適に利用するために
十分に注意することが大切である。
 コンピュータウイルスと一口に言っても,さまざまな種類のものがあり
1.メールを送信するたびに,後からウイルス添
付メールを同じ相手に送り,ウイルス対策各社のHPが見られなくなる。(ウイルス名:マトリックス)
2.送受信したメール
の宛先や差出人にウイルスを送る。これはWindowsを起動するたびに渦巻画面が表示される。(ウイルス名:ハイブリ
ス)
3.ウインドウズのメールソフトのアドレス帳に登録されている全員にウイルスを自動送信するもので,ハードディスクが破壊されることもある。(ウイルス名:マジストラ)4.送受信したメールの宛先や差出人にウイルスを送る。このタイプ
はHPを見ただけで感染したり,パソコンの動作が遅くなったり,「.eml」と言う拡張子のファイルが大量にできる。(ウイ
ルス名:ニムダ)などで,感染をすると大変厄介な状況が生まれ最終的にはハードディスクを初期化しなおさなければ
ならなくなる場合が多い。しかし,これは初心者が簡単にできることではないので,そうならないような事前の対策が必
要になる。
また,最近はデータの記録メディアとしてUSBメモリーが良く使われる。しかし,現在このUSBメモリーからウイルスに感
染する事例が急増している。このタイプのウイルスはWindowsの自動再生機能を利用しているため,USBメモリをコン
ピュータに挿す時はShiftキーを押しっぱなしにする(この操作によってUSBメモリーの自動起動を防ぐ)などして他人か
ら借りたUSBメモリーは開く前にウイルスチェックを実行するなどの対策が求められる。
 電子メールを使っていると毎日様々な情報が送られてくる。「知らない人からの変な誘い」,「クレジット会社や銀行か
らと思わせてIDやパスワードの変更などを促すメール」,「在宅ワークの紹介・勧誘,添付ファイルを開くことを促すメー
ル」など。電子メールを始めたばかりだと,何でも「興味半分にクリックして見たくなる」。
そんな利用者の気持ちを利用してID,パスワード,クレジットカード番号,氏名,アドレスなどを取得することが目的であ
る。また,利用者に「どうしよう」と思わせる内容で会員登録させ,その結果,架空請求詐欺や預金の引き落とし,なり
すまし等に利用される。さらには,ファイルを開かせてウイルスに感染させたり,開いた人のパソコンのアドレス帳に登
録されている人たち全員にウイルスメールを送りつけたりする。最初自分は被害者だったのに,知らないうちに加害者
にもなってしまう。
 あなた宛てに送られたアドレスは送信者が確実にそのアドレスを使っていることを知っているわけではなく,ランダム
に発生させた文字列に送ってくるため,相手は本当に使われているアドレスかどうかはわからないので求めに応じて
問い合わせしたり,返信するとそのアドレスが本当に使われているアドレスであることを相手に教えるようなものなので
注意が必要である。
 そこで,電子メールを快適に使うための注意事項として
1.IDやパスワードはむやみに入力しない。2.本文のリンクを
クリックしない。
3.知らない人からのメールは無視して,添付ファイルがあっても開かずに削除する。などの注意が必
要だ。メールの最後に「配信停止・受信拒否はこちら」とあるアドレスをクリックすると,自分のアドレスが本当に使われ
ていることを知らせるようなものだ。その他の対策としてはウイルス感染を防ぐ対策ソフトの導入やプロバイダが提供
するウイルス検知や駆除,メールソフトにある「迷惑メールの拒否」などの設定を実施するとよい。情報セキュリティの
基礎知識は,経済産業省のホームページ(上記)で確認することを勧めたい。

3.個人情報守りたい

 インターネットの利用目的で「商品・サービスの購入取引」はパソコンで5割弱,携帯電話でも約3割,「デジタルコンテ
ンツの入手・聴取」は2割を超えている。このようなサイトを利用する場合,サイト上で最低必要な個人情報を入力せざ
るを得ず,不当請求,勝手な会員登録,国際電話料金の請求,個人情報が流出するなど心配になる。この心配は調
査結果からもわかる。
 調査項目の「インターネット利用で感じる不安」では「不安を感じる・少し不安」を合わせると47.5%,「不安は感じない
・それほど不安は感じていない」は47.8%と不安と安心が拮抗した結果となっている。また,不安の内容としては「個人
情報の保護に不安がある」(71.2%),「ウイルスの感染が心配」(67.2%)を挙げている。そこでショッピングサイトでは,
個人情報が傍受されないように「SSL」と言う暗号技術を使っている。
 SSLが有効かどうかは個人情報を入力するページのアドレス欄のアドレスに「https://」と「s」の字が含まれているか
,ブラウザの右下(またはアドレス欄右横,ブラウザやバージョンにより表示位置に違いがある)に鍵のマークがあるか
,サイトのどこかにオンライン犯罪から身を守るベリサインセキュアドシールが掲載されているかなどを確かめる。
鍵のマークはダブルクリック,ベリサインはクリックすると証明書が表示されるので商品提供者の詳細情報を確かめる
ことができる。また,適正な販売業者かどうかを判断する目安のオンラインマークや個人情報の適切な保護措置を整
備した業者かどうかを判断するプライバシーマークを確認するように心がけるとよい。
 インターネットを利用して,商品購入や各種予約,銀行決済などはまだ十分に浸透していると言えないが,今後益々
増加する傾向にあるため以上の点を注意して有効に利用したいものだ。
以下によく目にする代表的なマークを紹介する。

 
ベリサイン
    マーク
オンライン上で安心して買い物が出来る信頼性の高いマーク。
このマークをクリックすると訪問中のサイトが本物かどうかを確認することが出来る。セキュリティプロバイダでSSLサーバ証明書,ユーザ認証(アクセス管理),電子署名などセキュリティ機能を強化することで企業を支援する。

詳細は https://www.verisign.co.jp/ にて確認。
オンライン
    マーク
インターネットを利用した消費者向けの通信販売を行っている1年以上の活動歴のある事業者を対象に申請に応じて所定の審査を行い,適正と認めた場合にこのマークが事業者に付与される。
ただし,このマークは事業者を推薦したり商品・サービス等の内容・品質を保証するものではない。
詳細は http://www.jadma.org/ost/ にて確認。
プライバシー
     マーク
日本工業規格「JIS Q 15001 個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に適合し,個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を認定してプライバシーマークの使用を認める制度。
詳細は http://privacymark.jp にて確認。
トラストイー
     マーク
Webサイトにおける個人情報保護の推進,ならびに個人情報の適正利用の推進を主目的に1997年に米国法人TRUSTeが発足した。
このマークは大別すると3つの種類がある。
詳細は http://www.truste.or.jp/ にて確認。
e-TBTマーク

e-TBTマーク(電子旅行取引信頼マーク)は,インターネットを利用した電子旅行取引の普及と消費者の信頼を確保することを目的に旅行業登録を受けた者の申請により一定要件を満たす該当者の運営管理するHPに対し社団法人日本旅行業協会(JATA)若しくは社団法人全国旅行業協会(ANTA)が付与する。
詳細は http://www.jata-net.or.jp  もしくは
      http://www.anta.or.jp  にて確認。

*ここではほんの一部しか紹介できないが,現在では多くのマークがあり,目的に応じて付与されていてインター     ネットサイトで商品の購入やチケット等の予約をする場合,十分に全体を確認する習慣をつける ことが大切である。

 インターネットでは企業を始めとしてさまざまなHPが公開されていて,そのHPにはアドレスが与えられていて,このア
ドレスは今は英数字と一部の記号で表記されているが非英語圏においてはなじみにくいなどの理由で,さまざまな国
や地域で日常的に使われている文字をドメイン名に利用できるようになってきている(これを多言語ドメインと呼んで
いる)。
 インターネットの歴史をたどると,学術用ネットワークとして利用されてきた時代が長く続き,この段階では自由なコミ
ュニケーションによる研究情報の共有がネットワークを利用する目的であった。しかしながら,インターネット上に商用
ネットワークが登場してからは爆発的に成長し,ネットワーク上で実社会と変わらない活動がおこなわれるようになって
いる。また,インターネットにより世界中の人たちとコミュニケーションが可能となり,コンピュータを使って地球上の人
間が自由に情報交換し,情報の共有が出来る環境が提供されていることから,インターネットを人間のコミュニケーシ
ョンツールとしてとらえることもできる。
 インターネットの普及は人間が今まで作り出してきた文字,映像,音声などの文化的・知的な財産をすべてデジタル
情報として表現し,皆で共有する環境が作られた。また,これらのデジタル情報を蓄積する記録メディアも大容量化し,
これまでの財産である百科事典や辞書などもCD-ROMやDVDなどに変換(これを「情報の住み替え」と言う)して提供
するようになった。一方,出版,映画,テレビなどのメディアは「双方向」「対等性」「日常性」などを犠牲にしながらも規
模を拡大してきたが,インターネットはこれらの特性をすべて持っているため,日常的メディアとしても期待されている。
 インターネットの最大の特徴は「規模の大きさ」と「分散型」の仕組みを持っていて,誰でも簡単に情報を発信できるこ
とだ。発信した情報を監視する「特定の管理人」はいない自由な世界だ。だからこそ利用者一人ひとりのモラルが問わ
れている。

なお上記マーク使用にあたり,「プライバシーマーク推進センター」,「日本ベリサイン」,「社団法人日本旅行業協会」
「一般社団法人日本プライバシー認証機構」,「日本通信販売協会」から上記マーク使用に快諾いただき,掲載許可
をいただいたことに感謝します。


各種マーク使用許可の手続き等で掲載する時期が遅れましたことをお詫びします。